研究内容
反芻動物であるウシはドラム缶1本分の大きな「発酵タンク」を持っています。この発酵タンクをルーメンと呼びます。ルーメンは「ウシ自身では利用できない飼料のエネルギーを微生物の力を借りて利用可能な代謝産物にまで代謝させる」という重要な役割を担っています。例えば、多くの動物がエネルギー源として利用できるのは炭水化物と脂肪ですが、同じ炭水化物でもセルロースやヘミセルロースのような繊維質は利用できません。ところが反芻動物は自分自身の消化器官では消化できない繊維質をルーメンに住む微生物の働きにより消化し、エネルギー源として利用できるのです。
一方、ネコが厳格な肉食性とされる最大の理由は、エネルギー源としてもっぱら動物体の脂肪と蛋白質を利用し、動物体には少ない炭水化物に依存しなかったことです。その結果、ネコは炭水化物の消化や糖の代謝能力は発達しませんでした。
このように草食動物と肉食動物とでは、栄養システムに大きな違いがあります。ウシなど産業動物の栄養学は「生産性」が無視できない課題ですが、ネコなどの伴侶動物の栄養学は「健康維持」が課題です。こういった人類の食と心を豊かにするための栄養学の研究を目指しています。
実験中のウシの体調も管理
ケージの清掃中は外に出てね
実験室で分析中
先生からひと言
ウシとネコの栄養について幅広く研究してきましたが、ブタの栄養に関する研究も立ち上げました。ウシやブタなどの産業動物では「生産性」が重要な課題ですが、ネコなどの伴侶動物では「健康維持」が大切です。栄養管理による「生産性の向上」、「健康と疾病予防」の研究をとおして、社会に貢献する研究をめざします。