衛生学研究室

Laboratory of Hygiene and Public Health
衛生学研究室
 
所属
担当教員

教授   新倉  保
准教授  松井 清彦

場所
生命・環境科学部棟 6階 607号室
研究キーワード

研究内容

宿主体内で繰り広げられる生体防御応答と病原体の攻防を、マウスモデルを用いて解析しています。また、マラリア原虫をはじめとする様々な原生生物を比較解析することで真核生物の進化の謎に迫ります。

「妊娠によるマラリアの病態重症化機構の解明」
マラリア浸淫地域の人々はマラリア原虫に対する免疫を獲得しており、マラリア原虫に感染しても重症化することは殆どありません。しかし、妊娠するとマラリア原虫に対する抵抗性が低下し、病態は重症化します。また、妊娠中のマラリアにより流産や死産、胎児の発育遅延が頻発します。マラリア原虫に感染した妊婦における病態重症化機構は未解明な部分が多いことから、妊婦における重症マラリアの病理学的・臨床的な特徴を再現するマウスモデルを作出し、その病態生理について解析を行っています。 また、妊娠中および授乳中のマラリアの新規治療法の確立に向けた基礎研究を進めています。

「マラリア原虫のmRNA輸送機構の解明」
藻類を起源とするマラリア原虫のmRNA輸送機構は、多くの植物と同様に核外輸送受容体を欠いていることから、未だに多くの謎に包まれています。しかし、我々の研究成果によって、マラリア原虫のユニークなmRNA輸送機構の一端が明らかになりました(Niikura, et al. Front. Cell Infect. Microbiol. 2021)。この研究をさらに発展させ、マラリア原虫のmRNA輸送機構の全容を明らかにしたいと考えています。また、マラリア原虫を基軸として、様々な原生生物の遺伝子発現機構を明らかにすることで真核生物における遺伝子発現機構の進化過程の解明に挑む予定です。

研究戦略・手法(新倉、学生)
研究戦略・手法(新倉、学生)
 
研究戦略・手法(松井、学生)
研究戦略・手法(松井、学生)
研究戦略・手法(学生)
研究戦略・手法(学生)
 
衛生学研究室 教授(新倉)が編集・執筆に関わった、日本で初めての原生生物学辞典です(刊行日:2023年5月1日)。原生生物を対象とした様々な研究とそこから明らかとなってきた新たな知見を紹介し、進化、生態、人との関係など、幅広い知識と最新の情報を包括しています。
衛生学研究室 教授(新倉)が編集・執筆に関わった、日本で初めての原生生物学辞典です(刊行日:2023年5月1日)。原生生物を対象とした様々な研究とそこから明らかとなってきた新たな知見を紹介し、進化、生態、人との関係など、幅広い知識と最新の情報を包括しています。

先生からひと言

マラリア原虫をはじめとする熱帯病・寄生虫症に関する新たな知見を見出しましょう。また、原生生物のユニークな生存戦略を解き明かしましょう。

マラリアとマラリア原虫の研究について

マラリアは、全世界で年間約2億人が発症し、アフリカの小児を中心に毎年40万人を超える人命を奪う寄生虫疾患です。さらに、妊婦がマラリア原虫に感染すると様々な合併症を引き起こし、母体だけでなく胎児にも重大な影響を与えることが知られています。当研究室では、妊娠中および授乳中のマラリアに焦点をあて、マウスモデルを用いて妊娠中および授乳中の病態重症化機構の解明や新規治療法の確立のための基礎研究を進めています。また、マラリア原虫の「生物」としての形質や進化過程の理解を深めるために、マラリア原虫のmRNA輸送機構エネルギー代謝機構の全容解明を目指しています。

近年の主な研究業績

  1. Niikura M, Fukutomi T, Mitobe J, Kobayashi F. Characterization of a nuclear transport factor 2-like domain-containing protein in Plasmodium berghei. Malar J, 23:13, 2024.
  2. Niikura M, Fukutomi T, Mineo S, Mitobe J, Kobayashi F. The association between acute fatty liver disease and nitric oxide during malaria in pregnancy. Malar J, 20:462, 2021.
  3. Niikura M, Fukutomi T, Mineo S, Mitobe J, Kobayashi F. Malaria in the postpartum period causes damage to the mammary gland. PLoS One, 16:e0258491, 2021.
  4. Niikura M, Fukutomi T, Mitobe J, Kobayashi F. Roles and cellular localization of GBP2 and NAB2 during the blood stage of malaria parasites. Frontiers in Cellular and Infection Microbiology, 11:737457, 2021.(日本語での解説はこちら
  5. Niikura M, Fukutomi T, Fukui K, Inoue SI, Asahi H, Kobayashi F. G-strand binding protein 2 is involved in asexual and sexual development of Plasmodium berghei. Parasitol Int, 76:102059, 2020.(日本語での解説はこちら
  6. Niikura M, Inoue S, Fukutomi T, Yamagishi J, Asahi H, Kobayashi F. Comparative genomics and proteomic analyses between lethal and nonlethal strains of Plasmodium berghei. Exp Parasitol, 185:1-9, 2018.
  7. Niikura M, Inoue S, Mineo S, Asahi H, Kobayashi F. IFNGR1 signaling is associated with adverse pregnancy outcomes during infection with malaria parasites. PLoS One, 12:e0185392, 2017.(日本語での解説はこちら
  8. Niikura M, Komatsuya K, Inoue SI, Matsuda R, Asahi H, Inaoka DK, Kita K, Kobayashi F. Suppression of experimental cerebral malaria by disruption of malate:quinone oxidoreductase. Malar J, 16:247, 2017.(日本語での解説はこちら

日本脳炎と日本脳炎ウイルスについて

マラリアと同じように蚊が媒介する感染症の一つに、日本脳炎があります。日本では、「日本脳炎」は過去の病気と思われがちですが、世界では毎年6万人ほどの患者が発生しており公衆衛生上の課題となっています。研究室では、日本の日本脳炎ウイルスの現状を把握するため、血清疫学的解析や分子疫学的解析を中心に日本脳炎ウイルスの研究を行っています。

近年の主な研究業績

  1. Matsui K ,Yamaya M,Takase M, Morita K, Tajima S, Lim C.K, Saijo M, Daibata M, Nagayasu S, Takasaki T. Japanese Encephalitis Virus Genotypes 1 and 3 Isolation in Kochi, Japan. Japanese journal of infectious diseases, 76(2):151-154, 2023.
  2. Hashida Y, Higuchi T, Matsui K , Shibata Y, Nakajima K, Sano S, Daibata M. Genetic Variability of the Noncoding Control Region of Cutaneous Merkel Cell Polyomavirus: Identification of Geographically Related Genotypes. The Journal of infectious diseases, 217(10):1601-1611, 2018.
  3. Pitcher T, Sarathy V, Matsui K, Gromowski D, Huang C, Barrett AD. Functional analysis of dengue virus (DENV) type 2 envelope protein domain 3 type-specific and DENV complex-reactive critical epitope residues. The Journal of general virology, 96(Pt 2):288-293, 2015.
  4. Matsui K, Gromowski D, Li Li, Barrett AD. Characterization of a Dengue type specific Epitope on Dengue 3 virus Envelope Protein Domain III. J Gen Virol, 91:2249-53, 2010.
  5. Matsui K, Gregory D, Li Li, Schuh A, Lee JC, Barrett AD. Characterization of dengue complex-reactive epitopes on dengue 3 virus envelope protein domain III. Virology, 384(1):16-20, 2009.



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