研究内容
首都圏に位置する麻布大学の一番の強みは,小動物と大動物のバランスのよい臨床教育です.
われわれは,画像診断と臨床病理診断を組み合わせた新しい学問体系を目指して,2018年に臨床診断学研究室を立ち上げました.「画像所見を臨床病理と病理で裏付ける」が,「臨床診断学」の新しい学問体系のコンセプトです.臨床診断学研究室に所属した学生は,画像と臨床病理と病理のみならず,小動物と大動物の両方を学べることが特徴です.現在,3年生6人,4年生7人,5年生8人,6年生2人,社会人研究生1人,客員研究員1人,教員3人,総勢27人の大きな所帯です.
研究室の学生生活のゴールは,「笑顔で卒業」です.学部学生にとって楽しい研究室生活は,獣医師国家試験に合格することと同じくらい大切です.ただ楽しいだけではありません.勉強もしっかりやります.学生は,山田の下で牛の画像診断(X線とCTの読影)を,根尾先生の下で臨床病理診断(細胞診,血液検査等の臨床検査の解釈), 峰重先生の下で伴侶動物の病理診断(解剖と組織診断)を学びます.
1) 画像診断
2023年度の6年生の卒業論文は,「CTを用いた体積測定時のポリゴン法とブラシ法の比較」,「CTで計測したサラブレッド種の頸髄体積と頸部脊柱管体積を用いた頸椎狭窄性脊髄症の発症要因の検討」です.
2024年度に産業動物臨床教育センターにCTが導入される予定です.Digital RadiographyとCTを駆使して,産業動物臨床教育の更なる充実に取り組みます(「牛の臨床現場におけるDRを利用した厳格な治療適応基準の確立」科研費基盤研究C,研究代表者:山田一孝).
2)臨床病理
2023年度の6年生の卒業論文は,「マイクロパーティクルを用いた輸血用赤血球の障害度の評価」,「ウシの赤血球自死機構(エリプトーシス)の性状解析」,「液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)を用いたイヌ肝細胞スフェロイドにおける薬物代謝機能の検討」,「柴犬および秋田犬のエリプトーシスについての検討」,「イヌの保存血液における酸化ストレス関連物質とATP濃度の経時的変化」です.また,動物実験の削減に貢献する人工肝細胞作成の研究も実施しています(「微量の肝細胞から長期培養可能な犬の人工肝臓を作出する」科研費基盤研究C,研究代表者:根尾櫻子).
3)病理
犬や猫の自然発症疾患について, 病理学的アプローチからその病態解明に取り組んでもらいます. テーマとしては, 「猫の口腔扁平上皮癌における高悪性化機序の解明」などです. 実際に症例の病理診断を担当することで, 動物が病気になった原因や身体に生じている変化を学ぶことができます. また, 小型の非ヒト霊長類の実験動物であるコモンマーモセットの自然発症疾患の病理解析についても卒業論文の課題にすることができます.
共同研究
臨床診断学研究室では他大学や企業と共同研究を実施して,研究の視点を拡げています.共同研究の依頼は大歓迎です.
・「ペンギンのアスペルギルス症発症リスク評価と感染防御対策マニュアルの開発」(科研費基盤研究C,研究代表者:帯広畜産大学伊藤めぐみ,研究分担者:山田一孝)
・「絶滅日本産哺乳類における形態機能学的画像解析」(科研費基盤研究C,研究代表者:帯広畜産大学佐々木基樹,研究分担者:山田一孝)
・「小動物臨床におけるCT診断法に関する研究」(麻布大学ウィズアニマルクリニック共同研究,研究代表者:山田一孝)
・「動物用超音波実習シミュレータ開発」(獣医イメージングサポート共同研究,研究代表者:山田一孝)
・「動物用自動血球計数装置LC-662評価試験」(麻布大学堀場製作所共同研究,研究代表者:根尾櫻子)
・「ペリオスチンに着目したネコの口腔扁平上皮癌の高悪性化機序の解明」(科研費基盤研究C, 研究代表者:峰重隆幸)
学部卒業生の進路
・小動物臨床(7名)
・産業動物臨床(2名)
・地方公務員(1名)
・企業(1名)
・大学院進学(1名)
大学院修了生の進路
・産業動物臨床(1名)
2024年4月22日更新
先生からひと言
教員紹介
山田一孝
麻布大学獣医学部教授.第一種放射線取扱主任者.1997年岐阜大学大学院博士課程連合獣医学研究科修了. 2008年国立大学法人帯広畜産大学教授.2016年から現職.
根尾櫻子
麻布大学獣医学部講師.米国獣医臨床病理専門医.2005年麻布大学大学院獣医学研究科博士課程修了.2008年University of Pennsylvania; Veterinary Clinical Pathologyレジデントコース修了.2008年麻布大学助教.2018年から現職.
峰重隆幸
麻布大学獣医学部講師. 日本獣医病理専門家. 2016年麻布大学大学院獣医学研究科博士課程修了.2021年国立大学法人帯広畜産大学助教.2024年から現職.