


研究内容
首都圏に位置する麻布大学の一番の強みは,小動物と大動物のバランスのよい臨床教育です.
根尾先生と山田は,画像診断と臨床病理診断を組み合わせた新しい学問体系を目指して,2018年に米国獣医臨床病理専門医の資格を持つ根尾櫻子先生とともに臨床診断学研究室を立ち上げました.「画像所見を臨床病理で裏付ける」が,「臨床診断学」の新しい学問体系のコンセプトです.臨床診断学研究室に所属した学生は,小動物と大動物の両方を学べることが特徴です.現在,3年生6人,4年生5人,5年生7人,6年生8人,大学院生1人,社会人研究生1人,客員研究員2人,教員2人,総勢32人の大きな所帯です.
研究室の学生生活のゴールは,「笑顔で卒業」です.学部学生にとって楽しい研究室生活は,獣医師国家試験に合格することと同じくらい大切です.ただ楽しいだけではありません.勉強もしっかりやります.学生は,山田の下で牛の画像診断(X線とCTの読影)を,根尾先生の下で臨床病理診断(細胞診,血液検査等の臨床検査の解釈)を学びます.
1)画像診断
2022年度の6年生の卒業論文は,「牛の第四胃変位の特徴的X線画像所見」,「牛の関節疾患の特徴的X線画像所見」,「サラブレッドの骨格体積の成長曲線」,「ジェンツーペンギンのCTを用いた気嚢体積測定による病態解明」,「獣医療における職業被曝線量の検証」です.
大学院生の近藤太郎先生は,博士論文研究の中でサラブレッドの頸椎狭窄性脊髄症をCTの矢状断で診断する基準について世界で初めて報告し,第33回日本ウマ科学会学術集会優秀発表賞と令和3年度麻布大学増井光子賞を受賞しました(Kondo et al. Veterinary Medicine & Science, 2022, doi : 10.1002/vms3.767; Kondo et al. Journal of Veterinary Medical Science 84, 525-532, 2022).
第59回アイソトープ・放射線研究発表会では,大学院生の近藤太郎先生と6年生の眞下大和さんが,若手優秀講演賞をダブル受賞しました.(近藤「頸部CTスキャンを用いたサラブレッドの頸髄体積および脊柱管体積の解析」,眞下「サラブレッドのCT画像を用いた軸性骨格および付属骨格の体積計測による成長予測」)
2)臨床病理
6年生の卒業論文は,「リンパ球増殖性疾患の悪性度に関する遺伝子学的探索」,「犬の赤血球自己死(エリプトーシス)とセラミドの関連性」,「肝疾患と腸内フローラとの関連性」です. また,動物実験の削減に貢献する人工肝細胞作成の研究も実施しています(「微量の肝細胞から長期培養可能な犬の人工肝臓を作出する」科研費基盤研究C,研究代表者:根尾櫻子).
共同研究
臨床診断学研究室では帯広畜産大学,登別マリンパークニクス(北海道登別市),ウィズアニマルクリニック(北海道河東郡音更町),堀場製作所と共同研究を実施して,研究の視点を拡げています.共同研究の依頼は大歓迎です.
・「ペンギンのアスペルギルス症発症リスク評価と感染防御対策マニュアルの開発」科研費基盤研究C,研究代表者帯広畜産大学伊藤めぐみ)
・「絶滅日本産哺乳類における形態機能学的画像解析」(科研費基盤研究C,研究代表者:帯広畜産大学佐々木基樹)
・「小動物臨床におけるCT診断法に関する研究」(麻布大学ウィズアニマルクリニック共同研究,研究代表者山田一孝,客員研究員清水純一郎)
・「動物用医薬品の臨床試験に関わる共同研究」(麻布大学共同研究,研究代表者:根尾櫻子)
・「動物用自動血球計数装置LC-662評価試験」(麻布大学堀場製作所共同研究,研究代表者:根尾櫻子)
ペンギンのアスペルギルス症の研究では,早期診断と予防対策を講じることで,登別マリンパークニクスのアスペルギルス症の発生を抑えることに成功しました(松本直也ら.日本野生動物医学会誌25, 101-107, 2020;Itoh et al. Journal of Veterinary Medical Science 82, 1260-1266, 2020).登別マリンパークニクスに勤務している社会人研究生の松本直也先生は,この研究報告で日本野生動物医学会優秀論文賞を受賞しました.



先生からひと言
教員紹介
山田一孝
麻布大学獣医学部教授.第一種放射線取扱主任者.1997年岐阜大学大学院博士課程連合獣医学研究科修了. 2008年国立大学法人帯広畜産大学教授.2016年から現職.
根尾櫻子
麻布大学獣医学部講師.米国獣医臨床病理専門医.2005年麻布大学大学院獣医学研究科博士課程修了.2008年University of Pennsylvania; Veterinary Clinical Pathologyレジデントコース修了.2008年麻布大学助教.2018年から現職.