研究内容
食生活の欧米化は、生体内の栄養素バランスの乱れを引き起こし、高血圧、糖尿病などの生活習慣病をはじめ、多くの疾患に関与することがわかっています。ほとんどの栄養成分をいつでも好きなだけ摂取できる現代では、氾濫している多くの健康情報の中から、科学的根拠に基づいた確かな情報を見極め、自分の食を自分で選択する判断力を身につけることが重要です。
これまで食事中の栄養素は血液成分を変化させても、脳機能には影響しないと考えられていました。 ところが2種類の必須脂肪酸(オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸)は、脳内の脂肪酸組成の変化に伴って脳の働きに影響を与えることがわかってきました。私たちが感じる、喜怒哀楽といったような心の動きも、すべて脳の働きによるものです。もしも、脳がうまく働かなくなってしまうとどうなるでしょう? 楽しい出来事があっても楽しく感じない、ちょっとしたことですぐカッとなってしまう、何でもないことに落ち込んでしまう…。若者のキレやすさや、母親の育児放棄、中高年の自殺・うつなど、社会的に広がりを見せている“心の病(気分障害)”の原因の一つに、食生活の欧米化や魚食離れなどで激減しているオメガ3系脂肪酸の摂取不足が考えられます。
当研究室では、脳機能と脂肪酸を中心に生活習慣病などの疾患の予防・改善に関して、栄養成分が生命の維持・機能にどのように関わっているのか、動物を用いて研究しています。
先生からひと言
3大栄養素のひとつである脂質は、生活習慣病を加速させてしまう栄養素として嫌われがちですが、摂取しなくてはならない脂質もあります。動物実験を通してオメガ3系脂肪酸の重要性を理解し、自分の食生活に置き換えて、生命の維持・機能と栄養成分とのかかわりについて考えてみましょう。