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総合科学部門 化学研究室
研究内容
1.動物に生息する微生物がつくる化合物からヒト・動物の感染症治療薬を目指す
微生物や植物がつくる化合物(天然物)は、古くから薬として利用されています。現在も臨床で用いられている薬剤の約1/3が天然物をもとにつくられています。ヒトや動物にも多数かつ多様な微生物が共生していますが、これらの微生物の中には病原体に対して効果を示す化合物を生産するもの存在します。そこで私達は様々な哺乳動物、鳥類、爬虫類などから微生物を単離し、これらが生産する天然物の中から真菌感染症、細菌感染症、寄生虫感染症、ウイルス感染症に効果がある化合物を探索しています。これまでにコアラ、ハダカデバネズミ、ウズラ、ウシ、ヤギ、タヌキ、ウマ、シャチ、クジラ、トナカイなどから微生物を採取しています(実践的ジェネラリスト育成研究プログラムと連携)。得られた化合物は獣医学部の他の研究室や他研究機関と連携しながら薬剤への応用を目指しています。
2.広範なウイルス種に対して効果を示す抗ウイルス薬を目指す
新型コロナウイルスが世界的に甚大な被害をもたらしましたが、今後も新たなウイルス感染症が拡大する可能性が想定されます。急激に感染を広げるウイルスに対しては、幅広いウイルス種に対して効果を示す抗ウイルス剤が有効と考えられます。そこで私達は上記の天然物から広範なウイルスに対して効果を示す化合物を探索しています。国立感染症研究所及び獣医学科の研究室と連携して、新型コロナウイルスや肝炎ウイルスなどのヒトのウイルス、牛伝染性リンパ腫ウイルスやオーエスキー病ウイルスなど動物のウイルスに効果を示す抗ウイルス物質を探索しています。これまでの研究で、核内で遺伝子の転写を制御するタンパク質である核内受容体が、複数のウイルス種の増殖に関わることを明らかにしています。核内受容体はヒトでは48種存在することが知られており、これらを標的とすることで新たな抗ウイルス薬を目指しています。
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