研究内容
解剖学分野の研究のひとつには体のさまざまな作りに関して調べ、その結果を実際の臨床に役立たせようという目的で行われるものがあります。 私たちの研究室では、いくつかのテーマについて調べていますが、たとえば、動物の腹腔や臓器からのリンパがどのような経路を経て流れていくかについてを検討しています。 こうすることでリンパの中に混ざった感染物質や腫瘍細胞が腹腔や臓器からリンパ管や途中のリンパ節に入り、そして最終的に循環に戻るという道筋の全体がわかります。 これがわかればリンパを介して広がる病気の進み具合を予測することが出来ますし、予測できるから処置が可能になります。 人体医学ではこれらの網の目に走る体内のリンパ管の様子はよく調べられていて、実際の臨床に大変役だっています。 最近ではセンチネル・リンパ節(腫瘍細胞が腫瘍部分から離れて最初に到達するリンパ節)の研究がされていて、 その臓器所属のセンチネル・リンパ節に腫瘍の転移がなければ、従来、取ってしまうという予防処置をしていたその経路上にあるその他のリンパ節はそのまま温存して、 体のQOL(Quolity of Life)を考慮しようという考え方が広がっています。獣医学ではどうでしょうか? 獣医学では残念ながら、リンパ流路の研究は大変立ち遅れていて、体内を走るリンパ管のようす、リンパ節の分布すら十分調べられていません。 そこで研究室ではこの部分の解明について力を入れ、犬の体腔あるいは臓器からのリンパ地図の作成を目指しています。
先生からひと言
動物体の構造を、肉眼解剖学から組織細胞学までさまざまなレベル、光学顕微鏡からMRIまでさまざまな方法で解析しています。例えば、乳腺や肛門からのリンパの流れなどを調べる方法や三次元に描出する方法を考案し、診断や治療に役立たせようとしています。また、学外の臨床獣医師と共同でCTやMRIを用いた形態学的研究や、頭部の疾患治療に伴う唾液腺の細胞学的変化に関する基礎研究を行っています。