食のデータサイエンス研究室

Nutrition Epidemiology and Data Science

栄養疫学★ジャーナルクラブ(2018年前期前半)

投稿日:2018年07月12日

こんにちは。

梅雨が明け、すっかり初夏の陽気ですね。

研究室のジャーナルクラブは1~3月は期末試験や研究報告会などでお休みしていていましたが、4月に新たに3年生や大学院生、研究生が加わり総勢約30人で再開しました。

一通り自己紹介や研究の紹介などが終わってから、各班の4年生が論文抄読のお手本として、以下の4報を紹介し、大学院生が4報の要約をまとめてくれました。

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2018/5/7(イソチオシアネート班 前島君)

論文タイトル:中国の2つのコホートにおける、食事からのアブラナ科野菜の摂取量と尿中イソチオシアネートの相関  (Vogtmann E et al., Correlates of self-reported dietary cruciferous vegetable intake and urinary isothiocyanate from two cohorts in China. Public Health Nutr. 2015;18: 1237-44.)

 この研究は、キャベツや白菜、カリフラワーなどのアブラナ科野菜の摂取量と尿中のイソチオシアネートの相関について検討した中国の研究です。対象者は上海コホート研究(Shanghai Women's Health Study:約7万人Shanghai Men's Health Study:約6万人)に参加している男女約4600人です。尿中のイソチオシアネートは高速液体クロマトグラフィーという分析装置を用いて測定され、また習慣的に食べているアブラナ科野菜の摂取量はアンケートから推定されました。尿とアンケートともにコホート研究開始時(1996-2006年)に得られたデータです。加えてこの研究では、直近(インタビュー当日24時間以内とインタビューの前週)のアブラナ科野菜の摂取頻度をインタビューしました。結果は習慣的なアブラナ科野菜の摂取量と尿中のイソチオシアネート量では、弱い相関(スピアマンの相関係数:0.1149)がありました。直近のアブラナ科野菜の頻度と尿中のイソチオシアネート量では、少し相関が高くなる傾向(スピアマンの相関係数:0.2591)がありました。この結果は総摂取エネルギーなど結果に影響を与える要因で調整した後の結果です。尿中のイソチオシアネート量が直近のアブラナ科野菜の摂取量を示すバイオマーカとなる可能性を示唆した研究でした。

2018/5/14 食育班 長島君

論文タイトル:家計収入は特に学校給食のない日において、小学生の食品・栄養摂取量に関連している

(Murayama N et al., Household income is associated with food and nutrient intake in Japanese schoolchildren, especially on days without school lunch. Public Health Nutr. 2017; 20, 2946-2958.)

この研究では、世帯収入と日本の小学生の食品・栄養摂取状況の関連を調べました。対象者は、東日本の4地域(都市部・地方)の19の小学校に通う5年生(10-11歳)とその保護者1447組です。両親の収入・学歴などの社会経済的地位は、アンケートの回答から得られました。また食事内容は、給食のある日(平日)とない日(休日)について、食事の記録と写真により把握されました。収入によってグループ分けをすると、収入の低さは魚介類、葉菜類、砂糖類、たんぱく質、鉄や亜鉛などの微量栄養素の摂取量が少ないこと、炭水化物からのエネルギー摂取が多いことと関連がみられました。これらの収入と食品・栄養摂取の関連は、給食がない日のみでその関連がみられ、給食がある日では関連がみられませんでした。学校給食が、収入により生じる子供の栄養格差を減らす役割を果たす可能性を示した研究でした。

2018/5/21 アクリルアミド班 細田君

論文タイトル:食事中のアクリルアミド摂取量と食道がんのリスクの関連について、スウェーデンの集団ベース症例対照研究における検討

(Lin Y et al., Dietary acrylamide intake and risk of esophageal cancer in a population-based case-control study in Sweden. Int J Cancer. 2011; 128: 676-81.)

この研究では、食事から摂取したアクリルアミドが食道がんのリスクになるのかを検討しました。対象はスウェーデンの人(食道がんの人:618, 食道がんでない人:820名)で、アクリルアミド摂取量は20年前のアンケート結果から計算されました。アクリルアミド摂取量の高低によってグループ分けをした結果、最も摂取量が多いグループは最も摂取量が少ないグループと比較して、食道がん(食道線がん、食道扁平上皮がん、食道胃接合部腺がんを合計)のリスクが1.23倍上昇することがわかりました。特に過体重(Body mass index:25以上30未満)や肥満(Body mass index:30以上)の人たちで、よりリスクが高まる傾向がありました。またタバコを吸わない人に限定すると、食道扁平上皮がんで2.82倍リスクが上昇し、量反応関係(アクリルアミドの摂取量が多いほど食道扁平上皮がんになるリスクが高まること)がみられました。これらの結果は、いずれも年齢や性別など結果に影響を与える要因を調整したあとの結果です。食事からのアクリルアミド摂取が食道がんのリスクになるかもしれないことを示した研究でした。

2018/6/4 システマティックレビュー班 渡部君

論文タイトル:乳児期のヨーグルト摂取は5歳時のアトピー性皮膚炎・食物アレルギーと負の関連がある:病院ベースの出生コホート研究

(Shoda T et al., Yogurt consumption in infancy is inversely associated with atopic dermatitis and food sensitization at 5 years of age: A hospital-based birth cohort study. J Dermatol Sci. 2017 May; 86: 90-96.)

この研究は、乳児期の習慣的なヨーグルトの摂取が5歳時点のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーに与えるリスクについて検討した研究です。対象は、東京の都市部にある病院で生まれた乳児1550名です。ヨーグルトの摂取は1歳の時にアンケートでヨーグルトや乳酸菌発酵飲料の頻度(なし、時々、毎日)を調べました。アトピーや食物アレルギーの罹患に関する情報は5歳の時の健診から得ました。毎日ヨーグルトを食べる乳児は全体の38%でした。また毎日ヨーグルトを食べるグループは、5歳の時のアトピー性皮膚炎で0.7倍(30%)、食物アレルギーで0.53倍(47%)リスクが低下するという結果になりました。この結果は両親のアレルギー疾患の既往歴や性別など結果に影響を与える要因で調整したあとの結果です。ちなみに喘息や鼻炎などの他のアレルギー疾患では関連は見られませんでした。この研究で著者らは、ヨーグルトの摂取に関する情報が「頻度」のみで、「量」に関するデータがないことを限界として挙げています。

以降、3年生が続々と論文紹介をしています。その内容については、また追ってアップしていくこととします。

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