食のデータサイエンス研究室

Nutrition Epidemiology and Data Science

栄養疫学★ジャーナルクラブ(2017/12/08)

投稿日:2017年12月11日

公衆栄養学研究室の石原(教員)です。

秋も深まってきました。研究室の窓から見えるいちょう並木が、黄金色に染まっています。

この色を見て、焼き芋を連想してしまうのは私だけでしょうか??

本日は、3年生の細田さんがジャーナルクラブで紹介してくれた、アクリルアミド発がんの関連についての論文ハイライトを紹介します。

皆さん、アクリルアミドって聞いたことありますか?

炭水化物の多い食品を加熱調理することによって副産物としてできる発がん性のある有害な化学物質です(ちなみにさつま芋は典型的な炭水化物多い食品です・・・)。

発がん性物質と聞くとちょっと怖い((((;゚Д゚)))))))、、、焼き芋も危ないの??、と心配になるかもしれません。

でも、実際には食品は加熱しないと危険なものも多くあるので、心配しすぎると何も食べられない・・・、という状況になってしまいますね。

この論文は、私たちが普段食べているアクリルアミドの量の違いによってがんが発症しているのかどうかについて、ヨーロッパ10カ国約30万人を対象にして検証しています。

論文タイトル:アクリルアミド摂取量と子宮内膜がんの関連について、欧州におけるがんと食事に関する前向きコホート研究における検討(Obon-Santacana et al., Dietary intake of acrylamide and endometrial cancer risk in the European Prospective Investigation in to Cancer and Nutrition cohort. BJC. 2014;111, 987-997.)

この研究では、アンケート結果から計算されたアクリルアミド摂取量と、子宮内膜がんのリスクとの関連を検討しました。対象となった人たちは、イギリスやオランダなど、1990年代にアンケートに回答した人たちについて、平均11年間後の子宮内膜がん罹患の有無を調べました。アンケートから分かったアクリルアミドの摂取量の高低で、対象者を4グループに分けて比べても、子宮内膜がんの罹患率に差はありませんでした。これは、喫煙や飲酒など、子宮内膜がんのリスクとなる様々な要因を調整しても変わりませんでした。ちなみに、このヨーロッパの人たちのアクリルアミドの平均摂取量は24マイクログラムでした。(論文の本文は↓のURLからダウンロードできます。)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4150262/pdf/bjc2014328a.pdf

ヨーロッパでは、パンやラスク、コーヒー、フライドポテト、ビスケットなど、アクリルアミドを含む可能性のある食品を、日本人よりたくさん食べていますので、その人たちでのこの結果は、少しの安心材料かも。

ただ、他のがんではリスクが高くなるという報告もありますので、やっぱりアクリルアミドが日本人の毎日の食事にどのくらい含まれていて、私たちの健康を害しているのかいないのか、知りたいですよね。(個人的には焼き芋、、、)

日本では今のところ疫学研究のエビデンスがあまりありません。

そこで現在、私たちの研究室では日本人の摂取量を明らかにし、がんの発生との関連を明らかにするための研究を進めています。

食品中のアクリルアミドの安全性については、内閣府食品安全委員会のホームページで紹介されています。

https://www.fsc.go.jp/topics/acrylamide-food170620.pdf

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